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「母との距離、わからぬまま」戦後を生きた母と娘の物語

2024.10.28

朝日新聞岡山版連載「いろとりどり」、10月10日掲載で紹介したのは、戦争で父を亡くした子とその母の「戦後の歩み」を綴った作品でした。
Wife360号特集「母よ!」に寄せられたKさんの作品から抜粋して掲載しました。

戦争で死んだ父。
写真でしか知らないけれど、自分のことを可愛がってくれた父。写真を見ると湧き上がってくる淡い感傷。
それでも、戦争が終わり、20代で寡婦となった母と幼い子どもは、現実を生きていくしかない。進駐軍のオフィスで働き始めた母は、ほどなくして男友達と付き合い始める——。

母親が給料の話をしていた時、「ふようかぞくって何」と子は尋ねる。
「あんたのことよ」と母が答える。
扶養家族」のことなのだけれども、子は「そうかわたしは不要家族なのだ」と納得してしまう。

ひとりで留守番することにも慣れて、母親が話す男友達の話も、他に聞いてくれる人がいないのならば、と聞いてすごす。

「私を妊娠する前に父が亡くなっていたら、母の人生は違ったものになっていただろうし、不要な私が、母が必要としているものについて何か言う権利はない」と子は思う。

子は成長し、大人になって家を出た。
母はその後も自分の人生を謳歌した。

母が亡くなった後に残されたアルバム。
残された数々の母の写真。
それを目にした時、子の胸に湧き上がるものは……。

すれ違ったままで終わった、母と子の関係。
80年が過ぎ、忘れ去られようとしている戦争が、いかに多くの人たちの人生を狂わせたのか。
しみじみと考えさせられる作品です。

投稿誌Wifeは、普通の人々が生きていく中で自分の心に湧き上がるものを「言葉」にして綴ったもの。ひとつひとつの作品に、いろとりどりの人生が煌めいています。
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