『主婦を問い直した女たち』:井戸まさえさんの書評紹介
2021.03.08
ジャーナリストの井戸まさえさんが「主婦を問い直した女たち」、そして投稿誌わいふ/WifeについてTwitterで語ってくださいました。ここにまとめて掲載します。
『主婦を問い直した女性たち-投稿誌『わいふ/Wife』の軌跡にみる戦後フェミニズム運動』(池松玲子・勁草書房)。
森元総理による女性蔑視発言。 さて、この間の議論の中での物足りなさの一つは、発信の中に、いわゆる「専業主婦」が見当たらないことだった。職業キャリアを積み上げるライフコースを選び、成功している女性たちの声はある程度想像はつくし、ツイッターやclubhouseで、容易にアクセスすることができる。
一方で無業の妻・母として家事・育児を担い「専業主婦」を選んだ、もしくは選ばされた女性たちはどう捉えたのかを聞く機会が少なかった。
「男だろ!社会」の最前線で闘っているのは働く女性たちばかりではないはずなのだが、一見「わきまえた女グループ」にカテゴライズされるからなのか、いやむしろ、冷静で、騒動をじっくりと分析しているからなのか。
そんな私の「問い」に答えてくれるのは前掲の池松氏の著書だ。戦後日本社会が経験してきた変化の中でも、女性をめぐる変化はもっとも大きなもののひとつだ。(←対応できなかったのが「森発言」)
高度成長期には家族や社会を家庭内から支える要として女性役割の規範的モデルとされた「主婦」は、1990年代に至っては何らかの正当化が求められるようになる。この大きな社会意識変容の過程を併走したのは、明示的にフェミニズムを掲げたわけではない投稿誌『わいふ/Wife』だった。主張内容や文章の巧拙で投稿を選別しない編集方針は、差異の受容や多様性を担保にもつながっていた。女性たちは「投稿」という行為を通じて、「生きる」ことでさらされる、痛みも含めた日々のリアリティを伝え合う場を共有していたのである。
『わいふ/Wife』で継時的に展開される誌上論争の緊張感たるや。幾度も言葉にして出そうとしてためらい、ようやく絞り出されたであろう文字に圧倒される。
この論文では、『わいふ/Wife』が個の自覚という実質的なフェミニズムのメッセージをより広い層の女性たちに伝える回路となりえていたことが示される。「me,too」や「フラワーデモ」等の先駆としても位置づけられるのではないかとも思う。
「森発言」の深淵を探る観点からも、今こそ読むべき本だ。
#わきまえない女たち の盛りあがりは嬉しいものですが、それでも声を上げることをためらう女性も、高齢の方などSNSで発信しない方もおられます。それでもみなさん自分自身の「声」をもっておられる。日常を生きる中で溢れてくるホンネを書き留めること、共有することの大切さをあらためて実感します。
多様な声が集まることのできる場所、「前に進む」時代と繋ぐ場所——それが投稿誌「Wife」役割のひとつですね‼️😊